人類がはじめた農の営みは、一万年以上前から、
小麦の栽培にはじまり、農耕、牧畜による食料生産によって
歴史上基幹的な存在であったことはまちがいないところだと思います。
しかし現在の農の営みは、農業としていかに市場的な効率性を重視していくか、
つまり工業部門と同じ考え方をあてはめてきました。
その結果農業存続の危機、農村崩壊さえ起こっています。

本来の農の営みは経済的、産業的範疇の中でとらえる農業をはるかに超えて
悠久の歴史とともに人間的、社会的、自然的な意味を常に問い続けてきた
人間の歴史そのものと言っても過言ではない気がします。
長く続いてきた人間の農の営みは、行きていくために不可欠な食料を生産し、
衣と住においてもその基礎的な原料を供給し、
さらには山、川、森林、湖沼、海、土壌のなかに存在する
多様な生物種を守り続けてきました。
もともと地域には、はじめに自然があり、はじめに農の営みがありました。
地域の自然体系を上手に利用する技、そして農業自体のなかに
生活、労働、接客が一体化している営みです。
そこに農民としての誇りや精神が生まれ、農村社会の姿が浮かびあがってくるのです。

これからの農業に対して要請されるものは、食料の安価で安定した供給だけでなく、
むしろ農業と自然環境の調和、安全な農産物の生産、伝統的農村の景観保持
といったものの重要度が高まっているのではないでしょうか。
私たちは、ここ興部の自然や酪農を通してもう一度地域を考え、
誇り高い地域として次世代につなげたい、そこで生きる人たちの生き様を、
人間的、社会的視点から豊かで希望あるものに変えていくのが使命と思っております。

さあ、その実現に向かって一緒に出発しましょう。

代表取締役社長　大黒　宏